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№488 自然は未来からの借り物

2022/05/30 新基地建設強行の現場から

辺野古第4ゲートー政府が率先する環境破壊

大規模伐採は大浦湾への赤土流出を招いた   寄稿  中村吉旦氏

 沖縄が入梅を迎えて以降、大浦湾の海上保安庁GB仮桟橋付近の海水に濁りが発生する日が続いている。原因は第4ゲート付近で行われている大規模な伐採にあることは間違いない。これまでの経過をたどりながら、検証してみたい。辺野古第4ゲート(以前は第3ゲート)に動きがあったのは、名護市長選敗北の余韻が残る1月28日金曜日。この日、前夜から沖縄県警沖縄署が、警察官の暴行によって高校生の片目を失明させ、怒った若者たちによって沖縄警察署が包囲されるという事件が起こり、辺野古の警備に来た機動隊が昼に帰るという事態となっていた。

■名護市長選敗北と共に開始された第4ゲート周辺工事

 それまで第4ゲートはテイケイの警備員が立哨警備をするのみであった。この第4ゲート周辺は前年の6月17日、日米合同委員会によって約7.9ha(沖縄セルラースタジアム那覇2個分)が日米共同使用区域に指定され、「シュワブ(R2)造成追加工事(その1)として、仲程土建が6億余りで受注し、いずれ工事が始まると思われていた。そして1月28日、第4ゲートから重機が入り、バリケード代わりに使われていたトンブロックなどが次々と片付けられていった。1月31日月曜日午前8時過ぎ、第4ゲートのゲートが開けられ、工事業者らしき人影が何名か見えた。私たちは直ちに第4ゲートに向かいゲートを封鎖。事前に入った数名を残して、以降の作業員の入場を阻止する。この日辺野古に機動隊は来ていなかった。

 第4ゲートには沖縄防衛局職員とみられる人物や、内閣府総合事務局北部国道事務所の職員が時折姿を見せた。防衛局職員らしき人物は「これは美謝川の工事とは関係ない」と力説、辺野古新基地建設関連ではないから抗議行動をしないでほしいと……。第4ゲートがある地点は急カーブとなっている。その頂点に当たる部分に第4ゲートは設けられており、交通量も多く、非常に危険な場所である。にもかかわらず、北部国道事務所が、工事用にゲートの使用を許可したことは、大いに問題がある。結局この日以降、作業員は早朝に入場、大型車両等は午前11時と午後2時の出入りに限定させることに成功した。しかも機動隊がいる時のみという条件付きである。2月8日火曜日、第4ゲート内ではついに伐採が始まった。最初に手が付けられたのは第4ゲート周辺の樹々。そしてゲート右側のモクマオウ。モクマオウはあっという間に伐採され、ユンボや軽車両用の駐車場と化した。それまでも多少の伐採はあったものの、広範囲にわたる伐採が始まったのはこの日が最初である。2月17日木曜日。それまで手が付けられずにいたゲート左側の緑濃い樹林の中からチェーンソーの音が轟き始めた。戦後70年余りかけてようやく育ってきた樹木が次から次と、チェーンソーによってなぎ倒されていった。やがて伐採の手段は、チェーンソーに加え、先に爪の着いた重機も使われるようになる。重機のそれは、伐採というよりも「殺戮」であった。「バキッ、バキッ、バキッ」。樹木をへし折る異様な音は、樹木からの悲鳴にも聞こえた。伐採は瞬く間に広がり、これまで見ることがなかった第4ゲート左手の谷間が人々の目にさらされるようになる。

■違法だらけの伐採と工事

 しかしこの伐採そのものに、様々な問題があることが発覚する。第4ゲート周辺は名護市の市有地である。名護市と国には「土地建物等賃貸貸借契約」が交わされており、この契約により市有地が米軍に提供されている。しかし今回「日米共同使用区域」によりこの契約そのものが無効であることが指摘されている。今第4ゲート周辺に新たに設置されたフェンスには「米軍区域」の看板はあっても、「日米共同使用区域」の看板はない。そして、伐採が始まった当時、この土地の所有者である名護市に、沖縄防衛局は伐採を行う場合に出さなければならない「土地建物等形質変更届」を提出していないことが明らかになった。この事実が明らかになると、沖縄防衛局は2日間伐採を停止し、名護市に慌てて「変更届」を提出、名護市も違法性を無視し、何事もなかったかのように「変更届」を受け取り伐採は再開された。その後この谷間部分には、大規模な商用車用(工事用)ゲートや、辺野古弾薬庫への新たな道路とゲートが設置されることが明らかになっている。

■第4ゲート周辺工事現場から大浦湾に赤土が流出

 ゴールデンウィークも開けた5月6日金曜日、大浦湾に驚きの光景が現れた。海上保安庁GB仮桟橋付近が茶色に濁っている。赤土が流出しているのだ。沖縄タイムス・琉球新報、そして沖縄県北部保健所赤土対策の係にこの事実を連絡する。さらには3月18日の大雨が降った日にも大規模な赤土流出があったことが明らかになった。皮肉にも大規模な伐採が行われたことによる判明である。翌日、赤土流出が報道される。この報道により、沖縄県が防衛局に対し立入調査を求めたことが、5月10日火曜日に行われたヘリ基地反対協議会と沖縄県の交渉の中で明らかになった。しかし防衛局は「濁水は第4ゲート周辺の工事とは関係ない」「沈砂池を設置して対処している」「米軍が許可してくれない」等の虚言を繰り返し、挙句に「調査には1ヵ月ほど待ってほしい」と回答してきた。

防衛局の言うように、濁水が第4ゲート周辺の工事からではないとしたら一体どこから出ているのか。無計画な工事によってあちこちから赤土が流出してしまっているのか。また米軍が許可しないというが、工事が行われている箇所は日米共同使用区域であり、日本側の判断で調査は可能なはずだ。第4ゲート周辺から大浦湾に赤土が流出していることは、まぎれもない事実である。大雨が降り、谷間に濁水が溜まった日、あるいは翌日には、大浦湾に大規模な赤土流出があることは、これまで何度も目撃されている。そして23日からの週は、谷間の水路を変更したり、太いパイプを設置したり、濁水処理プラントを使用したりして赤土流出対策を施し、工事関係者は「これでもう大丈夫」と豪語していた。しかし工事関係者の言葉もむなしく、2日間に渡って大雨が降った5月27日金曜日、大浦湾に谷から赤土が流出し、海上保安庁GB仮桟橋を中心に、海水が限りなく濁っていた。濁水対策はまったく功を奏していない。1ヵ月もすれば、梅雨は開けてしまうだろう。沖縄県は一刻も早く赤土流出の現地調査を実施するべく、毅然とした態度で沖縄防衛局に求めるべきである。天然樹林伐採という大規模な環境破壊が、第4ゲート周辺の保水力を奪い、そして赤土流出を招き、大浦湾の環境を破壊している。自公政府そして沖縄防衛局はどこまで沖縄県民を愚弄して環境破壊を拡大すれば気が済むのか。その政府は、環境保全も項目に入る国連主導のSDGs(持続可能な社会の実現)を声高に叫んでいる。キャンプ・シュワブ基地内で行われているすべての工事は、軍事的日米共同使用を視野に入れた辺野古新基地建設に関連していることは明らかである。直ちに無謀な工事を中止し、キャンプ・シュワブの閉鎖・返還を!

 

  伐採後
  伐採前

 

 

伐採前の現場
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