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№558 司法の反動化

2023/3/30 新基地建設強行の現場から

                  意見陳述書

                                浦島悦子

 私は1948年、鹿児島県川内市(現在の薩摩川内市)で生まれました。1990年から沖縄に住み、1998年3月、自然の中で子育てをしたくて、沖縄市から現在の名護市東海岸に移住しました。それから25年になります。▼四半世紀以上にわたって地元住民を翻弄し、地域コミュニティを分断し、大切な海や自然を破壊している辺野古新基地建設に対して、私が申し述べたいことは山ほどありますが、本日は一つだけに絞って意見陳述したいと思います。それは、この計画が、自然を破壊し、生物多様性を損壊するという根本的な「国家犯罪」であるということです。▼裁判官もご承知のように、自然は私たち人間が、それなくして生きることはできない生存基盤です。地域の自然は、衣食住の暮らしを支えるとともに文化を育み、人と自然との関わり合いが地域の歴史を作ってきました。とりわけ、辺野古・大浦湾の豊かな海は地域住民に大きな恵みを与え、戦後の食糧難の時にも命を救ってくれた恩人だと、当時を生き延びた先輩たちから聞かされてきました。▼自然とはすなわち生物多様性であり、底辺を支える微生物から高等動物に至るまで、多種多様の生物が作る三角形の頂点に私たち人間は位置しています。その三角形のどこかが壊れれば頂点は崩れてしまいます。人間活動の活発化に伴い、生物多様性がどんどん損なわれ、このままの開発や経済成長を続ければ人類自身の生存が危うくなるという危機感を共有した世界の国々が、21世紀を目前にした1992年に結んだ条約が生物多様性条約であり、日本政府も批准しています。▼2010年、名古屋で行われた第10回締約国会議で、2020年に向け「少なくとも陸の17%、海の10%を保護区にする」など20項目の目標をたてた「愛知目標」に合意し、日本政府は第5次生物多様性国家戦略を閣議決定しました。さらに2022年12月の第15回締約国会議で「ポスト愛知目標」として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に合意しました。これには「陸と海の少なくとも30%を保護区にする」、「劣化した陸域、海域の生態系の少なくとも30%で効果的な再生が行われる」など愛知目標より2~3倍は厳しいものを含め23項目があります。現在、環境省は、「昆明・モントリオール合意」を推進するべく第6次生物多様性国家戦略の策定作業を進め、3月末にも閣議決定する予定です。こうした国際的努力にもかかわらず、この30年間にも生物多様性は劣化し続けています。▼そんな中で、辺野古・大浦湾海域は、ジュゴンやウミガメの生存に深く関わり、多様なサンゴが生息しています。現在わかっているだけで5300種以上の生物が生息し、うち260種以上が絶滅危惧種、さらに調査のたびに新種が発見される「生物多様性の宝庫」「奇跡の海」とも呼ばれています。沖縄県は県の「自然環境保全指針」において、辺野古・大浦湾海域を「最も厳正に保全すべきランクⅠ」に指定しています。また、世界的に有名な米国のNGO・ミッションブルーは、地球上で保護・保全すべき海域の一つとして、この海域を「ホープスポット」に認定しました。▼日本政府は生物多様性条約の締約国として、また生物多様性国家戦略を閣議決定している立場から、先頭に立って生物多様性を保全・回復する義務があります。ところが率先して生物多様性を守らなければならない国が、それと全く逆に、地球上でも稀有の生物多様性を残しているこの宝の海を、国民の血税を使って破壊しているのです。閣議決定とは、担当省庁だけではなく、その文書がすべての省庁の事業に適用されることを意味します。防衛省の辺野古新基地建設の埋め立て事業も「国家戦略」の対象になることは言うまでもありません。しかも策定中の第6次生物多様性国家戦略案では「陸域・海域の30%を保護区にする」方向が出されているにもかかわらず、真っ先に保護区にすべき場所を破壊しているのです。▼大浦湾に軟弱地盤の存在が確認され、新基地の完成は困難と多くの専門家に言われながら、県民の強い反対の民意や県の指導も無視して、国は建設工事を強行しつづけています。既に、辺野古崎周辺のサンゴ礁と、ジュゴンの餌場でもあった広大な海草藻場は土砂で埋め殺されてしまいました。さらに、埋立土砂を採取される本部半島の山々の自然破壊も見るに堪えないものがあります。▼これら辺野古新基地の埋め立てに係る事業は、生物多様性条約に違反するだけでなく、私たち地域住民、そしてこの地にこれから生きていく次世代住民の暮らしと文化を破壊する犯罪行為です。国が率先して行っているこの犯罪行為を裁けるのは、行政権力から独立した司法であり、裁判官であるあなたです。▼ 軟弱地盤と言われている場所は、ヘドロではなく、柔らかい砂泥に包まれて無数の小さな生き物たちが息づいている命のゆりかごであり、大浦湾の生物多様性の底辺を支える大切な場所です。「地盤改良」の名目でこれを固めることは命の大殺戮であるだけでなく、大浦湾の生物多様性を根本から損なうことになります。▼裁判官におかれましては、国によるこの行為を、生物多様性条約や生物多様性国家戦略の目的、精神、規定に照らして合法的なのか否か、吟味していただきたい。それをせず、万が一にも「原告適格なし」と判断するなら、司法も、後世の人々から、生物多様性を破壊し続ける防衛省の片棒を担いでいたと断罪されることになることを深く想起していただきたい。▼命の恩人であり、これからも私たちの命を支えてくれるはずの宝の海が、日々破壊されていくのを見せつけられる地域住民の怒りと悲しみに思いをいたし、どうか、辺野古・大浦湾を、そして私たち及び私たちの子や孫たちを救ってください。これからもこの地で生きていけるよう、そして、地球の未来のために、賢明なるご判断を心よりお願い申し上げます。

  3月23日の那覇地裁の辺野古住民訴訟で行った裁判長(福渡裕貴裁判長)の検閲箇所は赤の3か所です。憲法を守る裁判官が憲法を踏みにじって国にすり寄る。この国はおかしくなっている。国民的反撃でヒラメの裁判官を替えよう。

  上記の写真は、3月29日に安和行動に参加した山さんからの提供です。

安和での抗議  海上警備に多額の税金浪費 海上メンバーから提供
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