今年5月3日に県内で行われた憲法シンポジウム(主催:沖縄県神社庁など、共催:自民党沖縄県連)で講演した西田昌司・自民党参議院議員が、糸満市ひめゆりの塔の説明書きについて、「歴史の書き換え」「沖縄ではむちゃくちゃな教育がされている」などと発言した。県内各界の猛反発を受けて「TPOをわきまえるべきだった」と釈明したが、発言そのものは撤回せず、「東京裁判史観による間違った歴史教育」という持論を変えてはいない。
その後、参政党の神谷代表が演説の中で西田発言を擁護し、県内でも石垣市の中山義隆市長が、「沖縄で(戦後の)偏向教育を受けてきた」などと述べた。
沖縄戦は、太平洋戦争末期、「国体(天皇制)護持」を至上命題とする大本営が、本土決戦を遅らせるための時間稼ぎとして行った、沖縄全住民を巻き込んだ「持久戦」であり、沖縄は「本土防衛」のための「捨て石」にされた、というのが、沖縄戦研究や体験者の証言を積み重ねる中で明らかになった史実である。日本軍が沖縄に来たのは、沖縄を守るためではなく日本本土を守るためだった。住民の根こそぎ動員、組織的なスパイ視・虐殺、食糧強奪、壕追い出し、「集団自決(強制集団死)」、そして、沖縄戦の最終局面で多くの住民を戦闘に巻き込み命を奪った第32軍の南部撤退など、すべての悲劇は「本土防衛」と県民蔑視の結果である。西田発言こそが、史実と真逆の「歴史の書き換え」であることは論を待たない。
沖縄戦の最大の教訓は、「軍隊は住民を守らない」である。それは、「新たな戦前」化が急速に進む現在にそのまま当てはまる。沖縄が再び「捨て石」にされようとしていること、軍隊が守るのは「国」であって、国民や住民でないことは、有事を想定した棄民に等しい「避難訓練」を見ても明らかである。
ヘリ基地反対協は1997年以来、一貫して辺野古新基地建設に反対し、運動を担ってきたが、その原点は、「二度と子や孫に戦争の哀れを味わわせてはならない」と新基地建設反対に立ち上がった沖縄戦体験者である辺野古のおじぃ・おばぁたちの強い思いであった。
沖縄戦の史実を否定し、戦没者を冒涜し、沖縄戦体験者をはじめ県民の尊厳を踏みにじる西田発言に対して満腔の怒りを持って抗議し、撤回と謝罪を要請するとともに、これを契機に、西田氏をはじめとする自民党のみならず、全国民が沖縄戦の実相を改めて学びなおし、二度と戦争の悲劇を起こさないことを強く求める。
2025年5月28日 ヘリ基地反対協議会