県は県民の立場にたった行政を! 寄稿 中村きったんさん 写真も
「何のための立ち入り調査だったのか?」 辺野古第4ゲートで監視を続ける筆者たちが、大浦湾への赤土流出を指摘してから約2ヵ月。沖縄県環境保全課・森林管理課が、ようやく6月28日にキャンプシュワブ内工事現場への立ち入り調査を行い、7月19日に行われたヘリ基地反対協への結果説明を聞いた素直な感想だ。本年2月から第4ゲート付近の工事が始まり、ゲート周辺の樹木はほぼ伐採されてしまった。その結果、保水力を失った丘陵から大量の赤土を含んだ雨水が第4ゲート下の谷間に溜まり、大浦湾へと流れ込んでいった。しかし沖縄防衛局はこの事実を否定、しかしながらどこから流出したかも説明していない。キャンプシュワブ内では現在、辺野古新基地建設に向けて、海の埋立ばかりでなく第4ゲート周辺の整備や建物の解体、新設、美謝川の切替工事など様々な工事が行われている。そのすべてが大浦湾への赤土流出の要因となっていると思われるが、とりわけ第4ゲート周辺の工事は主要な原因と思われる。その原因を追及し、対処することが6月28日の立入調査であったはずだ。それまでも海への赤土流出はあったはずだが、私たちが目視して県に通報したのが5月6日、翌7日には新聞報道をされ、10日に行われたヘリ基地反対協と県の交渉の中で、沖縄防衛局に対し立入調査の申し入れをしたことが明らかになった。しかしながら防衛局は「米軍との調整ができない」との理由をつけて、立入調査の1ヵ月の猶予を申し立ててきた。しかし工事区域は「米軍区域」ではなく「日米共同使用区域」。管理権限は防衛局にあるはずだ。米軍云々は防衛局による立入調査引き延ばしのための方便でしかない。ではなぜ引き延ばしを図ったのか。第4ゲート周辺の工事、特に皆伐採が大浦湾への赤土流出の主因であることは明らかである。工事関係者もそのことを認識していた。報道等により赤土流出の問題が大きくなる中で、防衛局は第4ゲート周辺でのボーリング調査以外の工事を中止、赤土対策工事に主力を注ぎ始める。しかし時は梅雨のさなか、大雨が降るたびに海への赤土流出が続いた。赤土対策工事は結局1ヵ月では終わらず、ほぼ2ヵ月を経過した6月末にほぼ完成したと見え、28日にようやく県による立ち入り調査が実現した。この立ち入り調査後の新聞記者の取材に対し、環境保全課は「赤土対策に問題はなかった」と回答している。当然の回答である。防衛局は対策の完了をもって立ち入り調査に応じているのだから。もっともこの日も対策工事は完了していなかった。調査後2日ほどたって、谷底の沈殿池とされる土手はブルーシートがはがされて、重機が入って工事が行われていた。
さて、19日の県環境保全課の説明時、県による対策の遅れが現在の大浦湾の汚濁につながっているのではという指摘に(大浦湾海上保安庁仮桟橋周辺は日常的に濁水している)、保全課は「調査を行った6月28日の時点では対策が講じられていた」と回答、「それではいつ濁水プラントが設置されたのか、沈殿池が設置されたのはいつなのか、工事が始まる前の赤土対策はどうなっていたのか」等々の質問に一つとして答えることができなかった。その上、立入調査の際、事前の事業内容からの変更を県が指摘していたという。事業内容を変更するには知事宛に変更届け出の必要がある。しかしながら担当者は「防衛局は届け出の必要はないとしており、まだ調整がついてない」というとんでもない発言をしている。赤土条例は県が所管しており、防衛局は県の指示に従う義務がある。にもかかわらず、当の担当者が防衛局のいうがままになっている。6月28日の立入調査時、事前の事業行為と通知書と異なる行為が行われていたならば、直ちにすべての工事を中止させ、改めて事業行為通知書を提出させて実行させることが当然ではないのか。環境保全課が私たちに提示した調査内容の「復命書」は、沖縄防衛局がこうした、ああしたとの記述の連続である。そこには県の立ち位置がまったく示されていない。県環境保全課は沖縄県の自然環境を守るために置かれているはずである。それが事業者の言うがままに対応していたら、守れるはずのものも守れなくなってしまう。「沖縄県赤土等流出防止条例」では、県の立ち入り調査を拒否した場合には罰則が設けられている。沖縄防衛局が5月初頭の立入り調査を拒否したことは罰則に抵触するのではないか。もしこの時点で環境保全課が毅然とした対応をしていれば、赤土流出被害は軽減されたはずである。この日はまた、これから行われる軟弱地盤工事(セメント安定処理工法)における六価クロム溶出の問題も指摘されたが、この問題に関しても明快な回答を得ることはできなかった。まもなく沖縄県知事選の時を迎える。私たちは玉城デニー知事を全面的に支援し、再び玉城デニー県政の下で軍事基地拡張工事による環境破壊を止めることに力を尽くし、辺野古新基地建設阻止の闘いに勝利しなければならない。